【建築学生必見!】Rhinocerosの時短テクニック20選|設計課題を爆速で終わらせるための思考法と実践術

Rhinocerous

この記事は、こんなあなたのために書きました。

Rhinocerosを使い始めたけれど、モデリングに時間がかかりすぎて悩んでいる建築学生の皆さんへ。

設計課題の締め切り前、モデリング作業に没頭し、「気づけば窓の外が明るくなっていた…」という経験はありませんか?

「この壁の高さを少し変えるだけなのに、関連する全てのパーツを修正するのが面倒だ…」

「同じ形状の窓を何十個も配置する単純作業に、一体どれだけの時間を費やしているんだろう…」 「もっとスマートに、まるでプロのようにRhinocerosを使いこなして、肝心の“設計”に集中したい!」

もし、あなたが一つでも当てはまるなら、この記事はきっと役に立ちます。

この記事を読めば、あなたのRhinocerosライフは劇的に変わります!

  • モデリング時間を圧倒的に短縮できる
    これまで時間がかかっていた作業が驚くほど速く終わり、設計のクオリティを追求したり、プレゼンボードを充実させたり、あるいは十分な睡眠時間を確保したりと、貴重な時間を有効活用できるようになります。
  • 単純作業から解放され、クリエイティブな思考に集中できる
    不必要な単純作業はPCに任せましょう。いままでモデリングに充てていた時間を建築学生として最も重要な「思考」に時間を充てることができます!
  • Rhinocerosへの苦手意識がなくなり、モデリングが楽しくなる
    私も、最初はRhinocerosが苦手でした。でも今では、アイデアを拡張してくれる最高の相棒です。あなたにとってのRhinocerosも、きっとそうなります。この記事で、その第一歩を体験してください。

第1章:まずはここから!作業前の「一手間」で差がつく環境設定編

Rhinocerosの操作を高速化する上で、多くの人が見落としがちなのが「作業を始める前の環境設定」です。

毎回ファイルを開くたびに単位やレイヤーを設定していませんか?その一手間、実は完全になくすことができます。ここでは、すべての作業の土台となり、あなたのモデリングスピードを根底から引き上げる4つの環境設定術を紹介します。最初に少しだけ時間を投資して、未来の自分を楽にさせてあげましょう。

1. 自分専用テンプレートファイルを作成する

毎回白紙の状態から作業を始めるのは、いわば「毎回更地から家を建てる」ようなものです。Rhinocerosには、あらかじめ設定を保存しておける「テンプレートファイル」機能があります。これを自分用にカスタマイズすることで、起動と同時に即モデリングを開始できます。

設定方法:

  1. 新規ファイルを開き、以下の設定を行います。
    • 単位設定: オプション(Options) > 単位(Units)で、モデルの単位をミリメートル(Millimeters)に、絶対許容誤差を0.01あたりに設定します。
    • レイヤー設定: 設計で必ず使うであろう基本的なレイヤーをあらかじめ作成しておきます。これだけで、作業中のレイヤー作成の手間が激減します。
      • レイヤー例: 00_通り芯, 01_壁, 02_建具, 03_家具, 99_寸法, 99_下書き線 など、自分なりのルールで名前と色を決めておきましょう。
    • 寸法スタイル: よく使う寸法スタイルや文字の大きさを設定しておきます。
  2. 設定が終わったら、ファイル(File) > テンプレートファイルとして保存(SaveAsTemplate)を選択し、分かりやすい名前(例: MyArchTemplate)で保存します。
  3. 次回からRhinocerosを起動する際に、保存したテンプレートを選択すれば、すべての設定が読み込まれた状態でスタートできます。

    レイヤー設定についての記事はこちら↓
    【Rhino初心者向け】”モデルがぐちゃぐちゃ”を卒業!建築学生のためのレイヤー整理術

2. 自分専用の「エイリアス」を育てる

「エイリアス」とは、コマンドの「あだ名」のこと。例えば、Lineコマンドを実行するのに、毎回コマンドプロンプトにLineと5文字入力したり、ツールバーのアイコンを探したりするのは非効率です。

これをL一文字で実行できるようにするのがエイリアスです。これを設定することで、「左手はキーボードでコマンド入力、右手はマウスで画面操作」という、モデリングの黄金律が実現できます。

設定方法:

  1. オプション(Options) > エイリアス(Aliases)を開きます。
  2. 「新規作成」をクリックし、左側に覚えやすいエイリアス(例: M)、右側に実行したいコマンドマクロ(例: Move)を入力します。

    エイリアスについての記事はこちら↓
    【Rhino作業、爆速化計画】知らないと損!コマンドエイリアスでモデリング効率を2倍にする方法

3. オブジェクトスナップを制する者はモデリングを制す

正確なモデリングの生命線である「オブジェクトスナップ(Osnap)」。しかし、便利だからといってすべての項目にチェックを入れていませんか?それは逆に作業効率を落とす原因になります。スナップ候補が多すぎると、意図しない点に吸い寄せられてしまい、修正に余計な時間がかかってしまいます。

  • 永続スナップは厳選する: 画面下部のOsnapパネルで、常に有効にしておくスナップは「端点、中点、交点、垂線、点」あたりに絞るのがおすすめです。他は必要に応じてオンにしましょう。
  • 一時スナップを使いこなす: Shiftキーを押しながらマウスを近づけると、一時的にすべての永続スナップを無効化できます。また、特定の点(円の中心点など)にだけスナップさせたい場合は、コマンド実行中にCenと入力するなど、コマンドラインから一時的に呼び出す癖をつけるとスマートです。
  • 「投影」を意識する: Osnapパネルの「投影」は、2D(作図)と3D(モデリング)を行き来する上で非常に重要です。オンの状態だと、すべてのスナップが作業平面(CPlane)上に投影されます。平面図を描くときはオン、立体的に作業するときはオフ、と意識的に切り替えるだけで、多くの作図ミスを防げます。

    オブジェクトスナップについての記事はこちら↓
    【Rhino初心者向け】オブジェクトスナップを完全攻略!建築モデリングの精度が爆上がりする使い方

4. Gumball(ガムボール)を徹底的に使い倒す

オブジェクトを選択したときに出てくるカラフルな矢印と円弧のアイコン、それが「Gumball」です。これを使いこなせば、Move, Rotate, Scaleといった基本コマンドをほぼ使わずに、直感的かつ正確な操作が可能になります。

  • 基本操作:
    • 移動: 矢印をドラッグ。矢印をクリックして数値を入力すれば、正確な距離で移動できます。(例: 1000と入力してEnter)
    • 回転: 円弧をドラッグ。クリックして回転角度を数値で入力できます。
    • スケール: 四角いハンドルをドラッグ。Shiftキーを押しながらドラッグで3次元均等スケールになります。
  • 応用ワザ(これだけは覚えよう!):
    • Altキー + ドラッグ: その場で複製ができます。Copyコマンドより圧倒的に速い場面が多いです。
    • Ctrlキー(MacはCmdキー)+ ドラッグ: Z方向など、特定の方向に押し出し(Extrude)ができます。簡単なボリューム作成に便利です。

まずはGumballを常に表示する設定にして、積極的に使ってみてください。マウスの移動距離とクリック数が劇的に減ることを体感できるはずです。

Gumballについての記事はこちら↓
【Rhino初心者】Gumball(ガンボール)完全攻略!モデリングが直感的になる使い方

第2章:クリック数を減らせ!コマンド入力と選択の効率化


第1章で作業環境を整えたら、次はいよいよモデリング中の操作を高速化していきます。モデリングが上手な人は、マウスの移動距離が極端に短く、クリック数が少ないのが特徴です。その秘密は、これから紹介するコマンド入力とオブジェクト選択のテクニックにあります。モデリング中の「探す」「選ぶ」といったロスタイムを、徹底的になくしていきましょう。

5. コマンド履歴と右クリックをフル活用する

同じ作業を繰り返すことは非常に多いです。例えば、「壁を1つコピーし、それをさらに別の場所にコピーする」といった場面。この「繰り返し」をいかに速く行うかが、時短の第一歩です。

  • 直前のコマンドを繰り返す3つの方法:
    • Enterキーを押す
    • Spaceキーを押す
    • マウスの右クリック

      この3つはすべて同じ「直前のコマンドを繰り返す」機能を持っています。自分のやりやすい方法で、指に覚え込ませましょう。もうツールバーのアイコンを何度もクリックする必要はありません。
  • コマンドオプションを使いこなす:
    コマンド実行中にコマンドラインに表示される (括弧) 内の文字、これが「コマンドオプション」です。これをクリックすることで、コマンドの動作を切り替えられます。例えば、_Lineコマンド中に 両側=はい をクリックすれば、クリックした点を中心に線分を作成できます。いちいちコマンドを中断して設定を変える必要はなく、作業の流れを止めずに操作を完結させる意識が重要です。

6. 「選択」のバリエーションを増やす

複雑なモデルの中から、目的のオブジェクトを一つ一つShiftキーを押しながらクリックしていませんか?その選択方法から卒業しましょう。Rhinocerosには、オブジェクトを効率的に選ぶためのコマンドが豊富に用意されています。

  • SelLast(直前に作成したオブジェクトを選択):
    オブジェクトを作成した直後に「あ、移動させたい」「色を変えたい」と思うことは頻繁にあります。そんな時、SelLastと入力すれば、作ったばかりのオブジェクトを一発で選択できます。エイリアス(例: sl)に登録必須のコマンドです。
  • SelPrev(直前の選択を復元):
    「あと少しで選択が終わるのに、うっかり関係ない場所をクリックして選択解除してしまった…」という絶望的をしたことはありませんか?(私はよくありました笑)。そんな時、SelPrevを使えば、直前の選択状態を完全に復元できます。これもエイリアス(例: sp)に登録しておけば、精神的なダメージを大幅に軽減できます。
  • レイヤーや色でまとめて選択:
    モデルが大規模になってくると、特定の要素だけを一括で編集したくなります。
    • SelLayer: 指定したレイヤー上のオブジェクトをすべて選択します。
    • SelColor: 指定した色を持つオブジェクトをすべて選択します。 これらのコマンドを使えば、「窓フレームだけ全部選択してマテリアルを変える」といった作業が数秒で完了します。
  • 投げ縄選択(Lasso):
    ドラッグで選択する際、クリックしたままマウスを動かすとフリーハンドの線で囲む「投げ縄選択」ができます。入り組んだ部分から特定のオブジェクトだけを選び出したい時に、四角いウィンドウ選択よりもはるかに便利です。

7. 表示・非表示をショートカットで操る

モデルが複雑化すると、オブジェクト同士の重なりで作業効率は著しく低下します。そんな時は、必要なものだけを表示し、不要なものを隠すクセをつけましょう。

  • Isolate (隔離) / UnisolateObjects (隔離解除):
    編集したいオブジェクトを選択し、Isolateを実行すると、選択したものだけが表示され、他はすべて非表示になります。「今からこれだけを集中して編集するぞ」という時に最適なコマンドです。作業が終わったら UnisolateObjects で元に戻します。
  • Hide (隠す) / Show (表示):
    こちらは Isolate とは逆の発想で、邪魔なオブジェクトを選択して一時的に隠すコマンドです。Showで再表示できます。

これらの表示系コマンドは使用頻度が非常に高いため、ショートカットキーに登録することを強く推奨します。

ショートカット登録推奨例:

ショートカットキーコマンド 内容
Ctrl + Alt + H Hide選択オブジェクトを非表示
Ctrl + Alt + SShow非表示オブジェクトをすべて表示
Ctrl + Alt + IIsolate選択オブジェクトを隔離
Ctrl + Alt + UUnisolateObjects隔離を解除

8. 作業平面(CPlane)とビューを瞬時に切り替える

傾いた屋根の上や、斜めの壁面に窓を開けたい時、どうしていますか?そんな時に活躍するのが「作業平面(CPlane)」です。これは、いわば「一時的な地面」を作る機能で、あらゆる面を基準に作業ができます。

  • CPlaneコマンドの基本:
    CPlaneと入力すると、様々なCPlaneの作成方法がオプションに表示されます。
    • オブジェクト: 指定した平面オブジェクトを作業平面に設定します。
    • 3点: 3つの点をクリックして、自由な角度の作業平面を作成します。 これを使いこなせば、傾斜地での設計や複雑な形状のモデリングが驚くほど楽になります。元のCPlaneに戻すには、コマンドを右クリックして元に戻すを選びます。
  • 名前付きビュー(NamedView)でアングルを保存:
    レンダリング用に決めたパースのアングル、プレゼン用に使うアイソメ図など、特定の視点を何度も使いたい場面は多いです。そのたびにマウスで視点を調整するのは時間の無駄です。NamedViewパネルを使えば、現在のビューに名前をつけて保存できます。これにより、視点を探し回る時間がゼロになります。

第3章:その操作、もっと楽にできる!モデリング実践編

環境設定と基本操作をマスターしたら、いよいよ実践的なモデリングテクニックです。建築モデリングでは「配置する」「揃える」「繰り返す」といった特有のシーンが頻繁に登場します。ここでは、それらの頻出操作を驚くほど効率化するコマンド群を紹介します。「一つ一つ手作業でやっていた、あの時間は何だったんだ…」と感じるはずです。

9. 正確な配置を一発で決める「Orient(方向付け)」コマンド

ダウンロードしてきた家具のデータを、部屋の隅にぴったり配置したい。そんな時Moveで移動させRotateで回転させScaleで大きさを調整…なんて手間をかけていませんか?「方向付け」を意味するOrientコマンドなら、それらの操作を一度に、かつ正確に完了できます。

  • Orient(2点基準):
    移動させたいオブジェクトの基準となる2点(例: 家具の底面の一辺)と、移動先の2点(例: 部屋の隅の壁のライン)を指定することで、移動・回転・拡大縮小を同時に行います。2次元的な配置に非常に強力です。
  • Orient3Pt(3点基準):
    Orientの3次元版です。傾いた屋根面に天窓を配置する、斜めの壁に沿って棚を取り付けるなど、複雑な角度を持つ面にオブジェクトをぴったり沿わせたい場合に絶大な威力を発揮します。基準となる3点と、配置先の3点を指定するだけで、オブジェクトが吸い付くように配置されます。もう面倒な角度計算は必要ありません。

10. 高さ・位置を揃える神コマンド「SetPt(座標設定)」

たくさんの柱の上端をGL+3000mmに揃えたい、バラバラな高さにある窓の上端をすべて同じ高さにしたい。建築モデリングでは、オブジェクトの特定の座標(高さなど)を「揃える」作業が頻繁に発生します。これを手作業でやると、ミスも起こりやすく時間もかかります。

SetPt(Set Pointsの略)は、そんな悩みを一発で解決する神コマンドです。

使い方:

  1. 高さを揃えたいオブジェクトをすべて選択します。
  2. SetPtと入力すると、「X, Y, Zを設定」のチェックボックスが表示されます。
  3. 例えば高さを揃えたいなら「Zを設定」のみにチェックを入れ、OKをクリック。
  4. 基準となる高さの位置を画面上でクリックすれば、選択したすべてのオブジェクトのZ座標(高さ)がその位置に瞬時に揃います

モデルがごちゃごちゃしてきた時の整理整頓にも使え、データ全体の精度を格段に向上させてくれます。

11. 繰り返し要素は「Block(ブロック)」で管理する

同じデザインの窓、椅子、植栽。これらを単純にコピー&ペーストしていませんか?それはモデルのデータを重くし、何より「後からの修正」を地獄にする最悪の手段です。

同じ要素を複数配置する場合は、必ずBlock(ブロック)機能を使いましょう。

  • ブロック化のメリット:
    • 一括編集: 最大のメリットです。ブロック化したオブジェクトは、1つを編集(BlockEdit)すれば、モデル内に配置した数十個、数百個の同じブロックが一瞬ですべて更新されます。「窓のデザインをやっぱり変えたい」と思っても、修正は一度で済みます。
    • データ軽量化: ブロックは「設計図」と「配置情報」だけで管理されるため、同じジオメトリを何度もコピーするより、ファイルサイズを劇的に軽くできます。PCの動作も快適に保てます。

窓、ドア、家具、照明器具、植栽など、繰り返し使う要素はすべてブロック化する。これを徹底するだけで、あなたのモデリングは「修正に強い」プロのデータに変わります。

12. 複雑な形状を直感的に操る「CageEdit(ケージ編集)」

有機的な曲面を持つ建築や、スタディ段階でボリュームを直感的にこねくり回したい時。制御点を一つ一つ動かすのは大変です。そんな時はCageEditを使いましょう。

これは、オブジェクトを一時的な「檻(Cage)」で囲い、その檻の制御点を動かすことで、中のオブジェクトを粘土のようにぐにゃりと変形させるコマンドです。パースを見ながら、全体のプロポーションをダイナミックに調整していく作業に最適です。複雑な形状も、直感的にコントロールできます。

13. ヒストリ機能で「修正に強い」データを作る

設計に「修正」はつきものです。むしろ、修正やスタディを繰り返すことこそが設計の本質です。「一度作ったら終わり」ではなく、後からいくらでも変更できる柔軟なデータ作成を心がけましょう。そこで役立つのが「ヒストリ」機能です。

コマンドを実行する前に、画面下部「ヒストリを記録」を右クリックで有効化(太字表示)しておきます。

例えばLoftで2本の曲線から屋根の曲面を作ったとします。ヒストリを記録しておけば、後から元の曲線(親)を編集するだけで、それに追従して屋根の曲面(子)が自動的に滑らかに更新されます。

断面形状を少し変えたり、パスカーブを調整したりするだけで、最終的な形状がリアルタイムに変化していく様子はパラメトリックデザインの第一歩。この機能を知っているだけで、設計変更への心理的ハードルがぐっと下がります。

14. Array系のコマンドを使いこなす

等間隔に並んだルーバー、階段の手すりの支柱、円形に配置された柱。こうした規則的な繰り返し作業はArray(配列複製)コマンドファミリーに任せましょう。

  • Array: X, Y, Z方向に、指定した個数と間隔でオブジェクトを複製します。グリッド状の配置に。
  • ArrayCrv: 指定したカーブに沿って、オブジェクトを等間隔または指定した数だけ複製します。螺旋階段や曲がった壁面に沿った要素の配置に便利です。
  • ArraySrf: 指定したサーフェス上に、UV方向に沿ってオブジェクトを複製します。パンチングメタルや特殊なテクスチャを持つ壁面の作成などに威力を発揮します。

単純なコピーの繰り返し作業は、今日で終わりにしましょう。

第4章:脱・初心者!一歩進んだデータ管理と応用術

これまでのテクニックで、個々の操作は格段に速くなったはずです。この章ではさらに一歩進んで、モデルが大規模・複雑化してもデータが破綻せず、スムーズに作業を続けるための「管理術」と「応用技」を解説します。ただ「作れる」だけでなく、作ったモデルを自在に「管理できる」中級者へとステップアップしましょう

15. レイヤー管理の「自分ルール」を確立する

モデルが複雑になるほど、その成否を分けるのはレイヤー管理です。行き当たりばったりでレイヤーを作成すると、後で必ず混乱します。レイヤー管理は「未来の自分を助けるための投資」と捉え、自分なりのルールを確立しましょう。

  • 命名規則を統一する:
    レイヤー名に一貫性を持たせることで、目的のレイヤーをすぐに見つけられるようになります。おすすめは「番号 + カテゴリ」という命名規則です。
    • 例: 01_Wall, 02_Slab, 03_Window, 04_Door, 11_Furniture, 99_Draft
    • このように番号を振ることで、レイヤーが自動的にカテゴリ順にソートされ、視覚的に非常に分かりやすくなります。
  • サブレイヤーで階層化する:
    大きなカテゴリの中に、小さなカテゴリを作ることで、より詳細な管理が可能になります。
    • 例:
      • Window (親レイヤー)
        • Frame (サブレイヤー)
        • Glass (サブレイヤー)
    • これにより、「窓全体を非表示」にすることも、「ガラスだけを選択して透明マテリアルを適用」することも簡単になります。
  • 「目的」でレイヤー分けする:
    部材の種類だけでなく、「マテリアルごと」や「図面化するときの線の太さごと」といった目的別にレイヤーを分けるのも重要なテクニックです。これにより、レンダリングや図面作成の際の作業効率が劇的に向上します。

    レイヤーについての記事はこちら↓
    【Rhino初心者向け】”モデルがぐちゃぐちゃ”を卒業!建築学生のためのレイヤー整理術

16. 「名前付き位置」で複数の案をスマートに比較検討する

「家具の配置、A案とB案、どっちがいいか先生に見せたい」「建物の配置計画で2つの案を比較したい」。そんな時、ファイルを2つに分けて保存していませんか? NamedPosition(名前付き位置)を使えば、1つのファイル内でオブジェクトの位置情報を複数記憶させ、瞬時に切り替えることができます。

使い方:

  1. A案の配置が完了したら、動かしたいオブジェクトをすべて選択します。
  2. NamedPositionと入力し、パネルで「保存」アイコンをクリック。Plan_Aなどの名前を付けます。
  3. オブジェクトをB案の位置に動かし、同様にPlan_Bとして保存します。
  4. これで、パネル内の名前をダブルクリックするだけで、オブジェクトがA案とB案の位置を瞬時に行き来するようになります。

コピーしてレイヤーを分けたり、ファイルを複製したりするよりも、はるかにスマートで効率的なスタディが可能です。

17. Make2Dをきれいに、速く実行するコツ

3Dモデルから図面(立面図や断面図)を生成する強力なコマンドMake2D。しかし、実行に時間がかかったり、不要な線だらけの図面が生成されたりして、ストレスを感じることも多いコマンドです。いくつかのコツを知っておくだけで、その精度と速度は大きく改善します。

  • コツ1:【最重要】不要なレイヤーは必ず非表示に:
    Make2Dは、現在表示されているすべてのオブジェクトを2D化しようとします。図面に不要な家具、植栽、内部の細かいディテールなどのレイヤーは、実行前に必ず「非表示」にしてください。これだけで計算量が劇的に減り、実行速度が向上し、生成される図面もクリーンになります。
  • コツ2:クリッピング平面(ClippingPlane)で範囲を限定:
    建物全体ではなく、断面図や一部分だけを図面化したい場合は、ClippingPlaneコマンドで表示範囲を限定しましょう。必要な部分だけを2D化することで、処理を高速化し、目的の図面を素早く得ることができます。
  • コツ3:オプションを理解する:
    Make2Dのダイアログでは、「ビュー」を現在のビューに設定するのが基本です。「隠線を表示」のチェックを外せば、見え掛かり線のみが生成され、データが軽くなります。

18. 簡単なGrasshopperで単純作業を自動化する

「Grasshopper」と聞くと、複雑なアルゴリズムや有機的なデザインを想像して、少し身構えてしまうかもしれません。しかし、その本質は「Rhinocerosの面倒な作業を自動化する」ツールです。Grasshopperを使うと、パラメトリックなスタディをすることができるようになります。(ボリュームスタディの効率が爆上がりします)複雑なスクリプトは不要です。ここでは、時短に繋がる簡単な活用例を紹介します。

  • Arrayより柔軟な配列:
    等間隔にルーバーを並べる作業は_Arrayでも可能ですが、Grasshopperを使えば、スライダーを動かすだけで「本数をリアルタイムに変更」したり(これが真髄)、「端にいくほど角度を徐々に変化させる」といったパラメータ操作が直感的に行えます。
  • 「ランダム性」の導入:
    Rhinoceros単体では難しい「不規則性」をデザインに加えるのも得意です。例えば、壁面に大きさや配置がランダムな窓を複数開ける、といった表現が数個のコンポーネントを繋ぐだけで実現できます。

まずは「単純な繰り返し作業をもっと楽にできないか?」という視点でGrasshopperを触ってみるのが、最初のステップとしておすすめです。

Grasshopperについての記事はこちら↓
【Grasshopper入門】建築学生のための最初の一歩!難しいイメージが変わる「考え方」と基本操作
【保存版】Grasshopper初心者が最初に覚えるべき基本コマンド15選【建築学生向け】
【Grasshopper初心者向け】ナンバースライダーで自由自在!パラメトリックな階段の作り方を徹底解説


第5章:情報収集で差をつけろ!おすすめリソース編

ツールは日々進化します。今回紹介したテクニックに加え、継続的に情報をアップデートしていくことで、あなたのスキルはさらに向上します。困った時に参照できる、信頼性の高い情報源を知っておきましょう。

19. 便利なプラグイン

プラグインとは、Rhinocerosの機能を拡張し、特定の分野に特化させるための追加プログラムです。いくつか建築学生にとって有用なものを紹介します。

  • VisualARQ: Rhinocerosを建築BIMツールに変身させるプラグイン。壁、ドア、窓などをパラメトリックな建築オブジェクトとして扱え、平面図や断面図の自動生成も可能です。
  • Elefront: ブロック管理やオブジェクトへの情報(属性)付与を強力にサポートします。大規模で複雑なモデルのデータを整理・管理するのに役立ちます。

20. 学習に役立つWebサイト

操作に詰まった時、新しい表現方法を探したい時、以下のサイトがあなたの助けになります。

Rhino GH.com:
日本語で学べるサイトとして、まずチェックしたいのがこちらです。 特にGrasshopperのコンポーネント解説が非常に丁寧で、初学者がつまずきやすいポイントを分かりやすく解説してくれています。具体的な作例も多く、実践的なスキルを身につけるのに最適です。
サイト:https://rhino-gh.com/training

おわりに

ここまで、20の時短テクニックを紹介してきました。

しかし、最も伝えたいのは、これらのテクニックはあくまで「手段」でしかないということです。私たちの本来の目的は、Rhinocerosを上手に使うことではなく、設計を通じた表現のはずです。

時短によって生み出された1時間、2時間という貴重な時間を、ぜひ設計のスタディや思考を深めるために使ってください。そのための時間を捻出することこそが、この記事のゴールです。

紹介したテクニックのすべてを、一度に覚える必要はありません。 まずは明日、「エイリアスを一つ登録してみる」「ブロックを一つ作ってみる」など、何か一つでも実践してみてください。その小さな習慣の積み重ねが、数ヶ月後にはあなたの制作スタイルを大きく変え、圧倒的な差を生むはずです。

そして、この記事をきっかけに、「この作業、もっと楽にできないかな?」と常に考えるクセをつけてみてください。あなた自身の試行錯誤の中から、きっとこの記事には載っていない、自分だけの最強の時短術が見つかるはずです。

ツールに振り回されるのはもう終わりです。Rhinocerosを最高の相棒にして、あなたの創造性を最大限に発揮してください。

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