【Rhino】Make2Dはもう古い? 「Technicalビュー」と「ShowZBuffer」を活用した爆速・高品質な図面作成ワークフロー

導入:その「Make2D待ち時間」、無駄にしていませんか?

建築学生の皆さん、設計課題の締切直前、こんな経験はありませんか?

  • 複雑な3Dモデルの「Make2D」コマンドを実行し、プログレスバーを眺めながら待つ時間。
  • 書き出されたAIデータを開いたら、線が重なっていたり、途切れていたり、不要な線が大量に生成されていて、Illustratorでの「線処理」に絶望する。
  • 結果、本来やりたかった表現やレタッチに時間が割けず、不完全燃焼のまま提出を迎える…。

Rhinocerosでの図面作成は、多くの学生にとって「Make2D」が常識だったかもしれません。しかし、Rhinoceros 7以降、その常識は大きく変わりつつあります。

この記事では、従来のMake2Dに依存したワークフローから脱却し、Rhinoの標準機能を活用して「高速」かつ「高品質」な図面データを書き出すための、新しい常識と具体的なテクニックを解説します。

この記事を読めば、あなたの作図とレタッチにかかる時間を大幅に短縮し、よりクリエイティブな表現に時間を割くためのヒントが得られるはずです。


結論ファースト:新常識は「ビューポートをベクターで直接書き出す」

今回解説するテクニックの核心は非常にシンプルです。

Rhinocerosの図面作成は、「Make2D」で2Dの線画を“抽出”する時代から、「ビューポートの表示スタイル」をそのまま“ベクター書き出し”する時代へと進化しています。

特に「Technical(テクニカル)ビュー」という表示モードを活用することで、Make2Dの計算を待つことなく、見たままの隠線処理された図面を瞬時にAIやPDFデータとして書き出せます。

さらに「ShowZBuffer(Zバッファ表示)」という機能を組み合わせれば、図面の「奥行き情報」を画像として取得でき、Photoshopでのレタッチの質とスピードが劇的に向上します。

Make2Dが完全に不要になるわけではありませんが、「スタディ用の図面」や「表現的なダイアグラム」の多くは、この新しいワークフローで十分対応可能です。両者の特性を理解し、使い分けることが重要です。


1. なぜMake2Dだけでは限界があるのか?

まず、私たちがなぜMake2Dに時間を取られているのかを再確認しましょう。

  • 処理速度の限界: モデルが複雑化(特に曲面やメッシュが増える)すると、Make2Dの計算時間は爆発的に増加します。
  • 線の品質問題: 生成された線は、時に重なったり、途切れたりします。Illustratorで「連結(Ctrl+J)」や不要なアンカーポイントの削除を延々と繰り返す作業は、設計の本質ではありません。
  • 表現力の限界: Make2Dは基本的に「線」しか抽出しません。陰影や面のハッチング、奥行きによる線の強弱(空気遠近法)といった表現は、IllustratorやPhotoshopで別途行う必要がありました。

これらの「待ち時間」と「修正時間」を削減するのが、これから紹介するテクニックです。


2. テクニック①:「Technicalビュー」による一発ベクター書き出し

Rhinoceros 6から搭載され、7以降で格段に実用的になった「Technicalビュー」は、モデルを図面風にリアルタイム表示してくれるモードです。これ自体は使ったことがある人も多いでしょう。

重要なのは、「このビューを、見たままベクターデータとして書き出せる」という点です。

実行手順 (ステップ・バイ・ステップ)

  1. ビューの設定:
    • 平面図、立面図、アクソメなど、書き出したいビューを準備します。
    • ビューポート名を右クリックし、表示モードを「Technical」に切り替えます。(またはコマンド _SetView > WorldTop などで視点を定め、_ViewMode > Technical を実行)
    • 必要であれば _ClippingPlane(クリッピング平面)を使い、断面図や平面断面を作成します。Technicalビューはクリッピング平面にリアルタイムで連動します。
  2. 書き出しコマンドの実行:
    • コマンド _Print(印刷)を実行します。(_Export でも可能ですが、_Print の方がスケール設定やプレビューが直感的です)
  3. 最重要設定:
    • 送信先: 「Adobe PDF」を選択します。(Illustratorで開きたい場合も、まずは高品質なPDF経由を推奨します)
    • ビューと出力スケール: 「ビュー」を書き出したいビューポート名に設定。「スケール」を「スケール指定」にし、図面スケール(例: 100 : 1)を入力します。
    • (ここが最重要!)出力の種類: デフォルトの「ラスター」から「ベクター」に変更します。
    • 出力色: 「印刷色」または「白黒」を選択します。
  4. 印刷と確認:
    • 「印刷」を実行し、PDFを生成します。
    • 生成されたPDFをIllustratorで開いてみてください。Make2Dで生成されたデータとは異なり、線がクリーンで、隠線処理が完了した状態のベクターデータが得られるはずです。

なぜこの方法が優れているのか?

  • 速さ: Make2Dのような複雑な2D投影計算を待つ必要がありません。ビューポートに表示されているものをそのまま出力するため、ほぼ一瞬で完了します。
  • 品質: 線の重なりや途切れが(Make2Dに比べて)圧倒的に少なく、Illustratorでの後処理が最小限で済みます。
  • 表現力: Technicalビューの設定(_Options > 表示モード > Technical)を調整すれば、シルエット(外形線)の太さを変えたり、陰影のハッチングを追加したりすることも可能です。

3. テクニック②:「ShowZBuffer」で奥行き情報を取得する

Technicalビューで「線」は取得できました。しかし、図面には「奥行き」の表現が不可欠です。奥にある線は薄く、手前の線は濃くすることで、空間の深さを表現できます。

これをPhotoshopで手作業(奥の線をレイヤー分けして透明度を下げるなど)でやるのは大変ですが、_ShowZBuffer コマンドがこの作業を自動化します。

Zバッファとは?

_ShowZBuffer は、カメラ(視点)からの距離(奥行き=Z深度)をグレースケールの濃淡で表示するコマンドです。一般的に、近いほど白く、遠いほど黒くなります。この「奥行き情報マップ」を使えば、Photoshopで「どこが奥か(手前か)」を簡単に判別できます。

実行手順

  1. ビューの準備: Technicalビューで書き出したのと同じビュー(カメラ位置)をアクティブにします。
  2. コマンド実行: コマンド _ShowZBuffer を実行します。
  3. ビューの確認: ビューポートが白黒の深度マップに切り替わります。
    • Tips: もし画面が真っ白、または真っ黒になった場合は、オブジェクトがカメラに近すぎるか遠すぎます。_Zoom > _Extents(全体表示)を一度実行してから、再度 _ShowZBuffer を試してください。
  4. 画像として保存:
    • このビューを画像として保存します。コマンド -_ViewCaptureToFile(ハイフン付き)を実行します。
    • 幅と高さを指定し(A3印刷なら3500px程度は欲しい)、ファイル形式(PNGやTIF)を指定して保存します。

Photoshopでの活用法

  1. Technicalビューから書き出した線画PDF(またはAI)をPhotoshopで開きます。
  2. _ShowZBuffer で書き出した深度マップ(白黒画像)を、別レイヤーとして上に重ねて読み込みます。
  3. 活用例A(空気遠近法):
    • 深度マップレイヤーの描画モードを「乗算」などに変更します。奥まった部分(黒い部分)が暗くなり、自然な陰影と奥行きが生まれます。
  4. 活用例B(奥の線を薄くする):
    • 線画レイヤーに対し、「レイヤーマスクを追加」します。
    • Altキー(MacはOptionキー)を押しながらレイヤーマスクのサムネイルをクリックし、マスク編集画面に入ります。
    • そこに深度マップ(白黒画像)をペーストします。(必要に応じて「階調の反転」Ctrl+I を行い、「奥=黒=見えなくなる」ように調整します)
    • これにより、Zバッファが黒い部分(奥)ほど線が薄く(透明に)なり、手作業では困難だった精緻な空気遠近表現が一瞬で完了します。

4. よくある失敗と使い分けのヒント

  • 失敗例1: Technicalビューを書き出したら、ただの画像(ラスター)になってしまった。
    • 解決策: _Print ダイアログの「出力の種類」を「ベクター」に変更するのを忘れています。ここが最も重要な設定です。
  • 失敗例2: Make2Dはもう本当に不要?
    • 解決策: いいえ、使い分けが重要です。
    • Technicalビューが向く: スタディ段階の高速な図面化、陰影を含めた表現的なアクソメ、レタッチ前提のダイアグラム、Photoshopで仕上げるパースの線画下地。
    • Make2Dが向く: 寸法線を入れる厳密な平面詳細図、Illustratorで線種や色(レイヤーごと)を厳密に制御したいキープラン、ベクターデータだけで完結させたい図面。

5. ポートフォリオへの活かし方

このワークフローは、ポートフォリオ制作の効率と質を直結させます。

  • ダイアグラム・分析図: Technicalビューで書き出した陰影付きの線画と、PhotoshopでのZバッファを使った色付けを組み合わせれば、スタディ模型の写真に頼らない、クールで情報量の多いダイアグラムが短時間で作成できます。
  • メインパースの空気感: レンダリングしたパースに、Technicalビューの線画を「乗算」で薄く重ねると、ディテールが引き締まります。さらにZバッファのマスクを使えば、パースの奥に行くほど線を薄くし、リアルな空気感を演出できます。
  • スタディの高速化: 設計プロセスを説明するページで、Make2Dの修正に時間を取られていては思考が止まります。Technicalビューで即座に書き出し、A3に並べて検討する。このスピード感が、設計の質を高めることにも繋がります。

まとめ

Rhinocerosでの図面作成は、Make2Dで「待つ」時代から、ビューポートで「見て・決めて・書き出す」時代へと変化しています。

  1. 「Technicalビュー」のベクター書き出しで、クリーンな線画を高速に取得する。
  2. **「ShowZBuffer」**で奥行き情報を取得し、Photoshopレタッチを効率化・高度化する。
  3. Make2Dは「厳密な図面」用とし、この新常識と使い分ける

Illustratorでの単純な「線処理地獄」から解放され、その時間を「どう見せるか」「何を伝えるか」という、よりクリエイティブな表現の追求に使ってください。

次の課題では、ぜひこのワークフローを試してみてください。

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